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読んでつくる知の体系

読んだ本、お勧めしたい本を紹介。ノンフィクションが多め。

『最後の秘境 東京藝大 天才たちのカオスな日常』


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テレビの特集で「東京藝大の学園祭はすごい!」としかこの大学については知らなかった。

舞台となる東京藝大のキャンパスは上野にある。美術家、音楽家を目指すも者としての最高学府がここにある。上野駅を背にして左側は美術学部、”美校”と呼ばれている。右側が音楽学部”音校”だ。著者の二宮敦人さんは、ノミをを片手に木槌を振り下ろして木彫りの亀を作ったり、時には体に半紙を身体中に貼り付け、等身大像の型を作り出す、そんな妻があまりにも面白く、妻が在学する、その面白さたる所以の東京藝術大学の中を、生徒たちにインタビューしながら紐解いていく。

 

大学の中で2つにわかれれている”美校”と”音校”。その2つの学部があまりにも違いすぎていて面白い。2つの校舎の境界線に立っていると不思議な感覚を覚える。行き交う人の見た目が、左右で全然違うのだ。音校に入っていく人たちがカジュアルなジャケットやスーツ姿の男性。女性はさらりとした黒髪をながびかせ、真っ白なワンピースと、まるで芸能人のようなオーラを放っている。

対して美校の学生はというと、、、真っ赤な唇、巨大なイヤリング。モヒカン男。自己表現の意識をバリバリに出している学生がいる一方で、全く外見にこだわっていない人もいる。髪がボサボサで、上下ジャージの学生や、変なプリントのTシャツだったり。数分も見ていれば、目の前を通り過ぎる学生が、美校と音校どちらに入っていくか見分けられる能力が身につけられるという。まったく必要のない能力だ。

 

音校と美校の学生たちが大学で学んでいることも大きく違っていて面白い。

音校の学生は在学中にプロとして演奏している学生も多いという。演奏して謝礼をいただくこともあれば、時にはお金を払ってまで演奏することもある。ある学生が「オーケストラの中で弾かせて頂く時は、十万くらいかかったりします、、、、結局名前と顔が売れないと、仕事のお話も来なくなってしますんですよ。そのためにはお金を払ってでも、演奏したいこともあるんです。」と語る。もうすでにあなたはプロですよ。と言いたくなるお言葉だ。

美校の学生は「芸術は教えられるものじゃない」と入学してすぐに言われる。

技術は習うことはできるが、それを使って何をするかは自分で見つけるしかない。教育の一歩先を言うような言葉である。何が評価されて、何に人気が集まるのかわからない世の中で、自分を色濃くデザインし発信していく。何が正解かわからない中で切磋琢磨するという意味で学生と教授の中は深まるという。

 

卒業後の生徒たちが半分ほど行方不明になる「ダメ人間製造大学」、と言われる藝大だが、その中で学んでいる学生たちはとても前向きだ。日本の芸術、音楽をこれから先担っていくアーティストたちをを輩出するこの”東京藝大”を余すところなく見れるのも本書の楽しみのひとつである。